クリストファー男娼窟:草間彌生ー幸せな哀しみの話より

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夜6時過ぎ、
日も暮れてそっと押し開けた、北白川通り沿いにある本屋の扉。

そこで出逢った本は山田詠美さんの傑作選で、
「幸せな哀しみ」と彼女が感じるいくつかの小品。

私は中でも草間さんの「クリストファー男娼窟」に心を奪われた。
舞台はニューヨーク。

人生をすっかりダメにし、
ヤク欲しさに相手構わず金を貪り取るだけのクズへと身を落とした
美しき黒人青年ヘンリーと彼ら男娼たちを元締める女子大生ヤンニーが絡み、
物語は進む。

湿気を帯び蒸し暑く西日の当たる薄汚い部屋、
日が沈んでから賑わい出す男娼たちの稼ぎの時間。
若く美しいヘンリーと夜を共にする愉しみに目を輝かせる初老の白人。
斬り殺されてしまう突然の終点へと向かうことさえ気づかない、
欲望の大盤振る舞い。
己の渦へと取り込まれて行くヘンリーを
全く気にせず無邪気にあるがままの凍る夜気、瞬く星。静かに広がる森。
内臓を剥き出され好き勝手いじり回されるような、
自尊心なんて可愛いことはとうの昔にゴミ箱へ葬りさられ、
そこにあるのは本質ではない感情からの性のやり取り。
性なんて綺麗事でなく、尻を出し、金を奪い取り、ヤクへと回り、
首も己も回らなくなり、また尻を出す。

セックスは人間が色付けする感情を伴う本能だけれど、
それは愛だけでない使われ方もあって、
そこには「正解」は存在しない。
その場でヤリあう者たちだけが意味付けられるものでもあるけれど、
この話に流れ込む極彩色の失調性は
私の、やはり内臓を剥き出しにされ見せつけられるような、
夢でない真実を感じてしまった。
私にもこんな本能や真実が備わってるの!?
そういう怖さ。

深く潜って聴く自分の声を私は信じている。
信じていよう。いつも。

ベッドのランプを灯して読むそれは、
その手の熱さを思い出させるのに十分、幸せな哀しみを抱えているみたい。
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by pieces_Yoshino | 2009-05-23 21:50 | お気に入りの本 | Comments(0)

湘南・寒川町で旬の地場野菜を使った精進弁当「黒猫」を営んでいます。お届けしている精進弁当情報 や、店主の日々あれこれを載せています。「想い、言葉、行為」をたいせつに。人が生きる本当の道は、真理を知る事。お志事を通して社会や人類のお役に立たせて頂きたいと切に願っています。大好物は、笑顔!


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